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ANAのSFC制度改定を考察|プロマネ視点で見る課題と制度設計

コンサルプロマネ経営考察
ANAのSFC制度改定を考察|プロマネ視点で見る課題と制度設計

事例から考える、課題解決と制度設計

この記事の視点

決済額だけでなく、継続的な貢献をどう評価するか。
混雑緩和と、利用者への還元を両立する制度を考えます。

ANAのスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度改定について、「改悪」という利用者視点の議論が目立っています。

これまで受けられた待遇が変わるのですから、不満や不安が出るのは当然です。

しかし、私たちのように企業の課題解決を仕事にしている者は、その不満だけで話を終わらせるわけにはいきません。

なぜ、この決断に至ったのか。何を解決しようとしているのか。そして、その対策は問題の根幹に届いているのか。

実際の現場でも、起きている事象と、その原因を取り違えたまま対策を重ね、同じ課題を繰り返しているケースがあります。

弊社は、そんなループを紐解く仕事をしています。

今回はこの制度改定を、私たちの業務視点、すなわちプロジェクトマネジメントの視点で整理してみます。

SFCとは何か

SFCは、所定の資格を満たした人が申し込める、上級会員向けのクレジットカードです。エコノミークラスの利用時でも、優先チェックインやラウンジなどの特典を受けられます。

搭乗実績のみでプラチナ資格を取得する場合、年間50,000プレミアムポイント(PP)、うちANAグループ運航便で25,000PPが必要です。資格取得後にSFCへ申し込む仕組みであり、通常のANAカードを持つだけでSFC会員になるわけではありません。

出典:ANA・ステイタス獲得条件

今回、何が変わるのか

2028年4月から、SFCは原則としてANAカード・ANA Payの年間決済額に応じた二つの区分に分かれます。

2028年4月からの主な違い
項目 SFC PLUS SFC LITE
年間決済額 300万円以上 300万円未満
スターアライアンス資格 ゴールド シルバー
ANAラウンジ 利用可 国内線:混雑時を除き利用可
国際線:羽田・成田・ホノルルで利用可
新設のSFCマイル特典 5,000マイル(本会員) 対象外

300万円未満でもSFCを退会させられるわけではありません。変わるのは、会員として受けられる特典です。

2026年9月の見直しにより、LITEでも国内線ラウンジは混雑時を除き利用可能となり、国際線ではANAグループ運航便への搭乗時に、羽田・成田・ホノルルのANAラウンジを利用できます。国内線の事前予約の仕組みも導入予定です。

また、100万ANAライフタイムマイル達成者は、決済額にかかわらずPLUSとなります。ただし、新設のSFCマイル特典5,000マイルには、年間300万円以上の決済が必要です。

なお、LITEが対象外となる5,000マイルは、新設の「SFCマイル特典」です。従来のボーナスマイルがすべてなくなるわけではありません。

出典:ANA・SFC制度改定

背景にある課題を整理する

ANAは、ラウンジの混雑などにより、サービスの快適性を維持することが難しい場面が生じていると説明しています。

また、ANAの説明を伝える報道では、会員数が増える一方でカード利用額は縮小傾向にあり、カードの日常利用を促して、設備投資やサービスの維持につなげる考えも示されています。

つまり、今回の改定では、少なくとも二つの課題を分けて考える必要があります。

  • 混雑の課題:ラウンジの収容能力に対して、利用が集中していること。
  • 収益の課題:会員サービスを継続するための収益基盤を確保すること。

この二つは関係していますが、同じ問題ではありません。

まず、問題を分ける

混雑を減らす対策と、収益を増やす対策が、それぞれ何に効くのかを確認する必要があります。

出典:ANA公式説明 / AIRLINE web・改定背景

事象と原因を混同しない

利用者から見ると、起きている事象は「特典の縮小」です。その変更に対して、不満や反発が生じています。

しかし、企業側が解決したい問題は、混雑によるサービス品質の低下や、制度の持続性です。

ここで「改悪だから撤回すべき」とだけ結論づけても、企業側の課題は残ります。一方、「維持に費用がかかるから条件を厳しくする」とだけ説明しても、既存会員の納得は得られません。

筆者の仮説

過去に資格を取得した人が蓄積していく制度に対して、その後の利用状況と、提供できるサービスの容量をどう調整するかが、十分に対応しきれなくなったのではないか。

これは外部から見た仮説です。ANAの内部判断を確認した事実ではありません。

プロマネとして見るべきなのは、誰が悪いかではなく、どの仕組みを変えれば問題が改善するかです。

アクション1|取得までの経緯を理解する

同じSFC会員でも、資格取得までの経緯は異なります。

  • 出張が多く、会社負担の搭乗でPPを積み上げた人。
  • ビジネスクラスやファーストクラスなどに投資した人。
  • 資格取得を目的に、効率のよい区間を繰り返し搭乗した人。

これらは顧客を理解するための例であり、すべての会員を三種類に分けられるという意味ではありません。

重要なのは、同じ資格を持っていても、経済状況、現在の利用頻度、資格に期待している価値は異なるということです。

なお、会社負担の出張であっても、ANAへの売上貢献はあります。自己負担の大きさと、企業への貢献は別に考えなくてはなりません。

取得経緯は期待を理解する材料に、現在の利用実績は待遇を判断する材料にする。この使い分けが必要です。

アクション2|既存会員と新規会員を分ける

既存会員と新規会員では、制度変更への向き合い方が異なります。

既存会員は、過去の条件と特典を前提に、時間や費用を投じて資格を取得しています。企業は、その期待をどう扱うかを考える必要があります。

一方、新規会員には、取得条件と取得後の特典を、あらかじめ明確に説明できます。

  • 既存会員:変更理由、周知期間、移行措置を考える。
  • 新規会員:今後も持続できる条件を示す。

これは、既存会員を永久に優遇するという話ではありません。制度を変更する際の説明と移行の設計を分けるということです。

アクション3|「最近使った」と「よく使う」を分ける

利用状況も、一つの軸では整理できません。

たとえば、過去1年以内に一度搭乗した人を「高頻度利用者」と呼ぶことはできません。

見るべきなのは、次の二つです。

  • 利用の継続性:最終搭乗から、どれだけ期間が経過しているか。
  • 利用による貢献:年間搭乗回数、航空券購入額、カード決済額などが、どの程度あるか。

しばらく搭乗していなくても、カード決済で貢献している人はいます。反対に、頻繁に搭乗していても、支払いを会社や別のカードで行っている人もいます。

貢献を、一つの数字だけで判断しない

カード決済が少ないことと、ANAへの貢献が少ないことは、必ずしも同じではありません。

アクション4|最上位で守る条件を決める

制度を考える前に、何を守るのかを明確にします。

私なら、次の三点を判断軸に置きます。

  • 品質:混雑を抑え、サービス品質を維持できること。
  • 還元:継続的な貢献を、特典に適切に反映できること。
  • 運用:利用者が理解でき、現場でも運用できること。

顧客の背景は細かく理解する必要があります。しかし、その分類をすべて利用条件に持ち込むと、ルールは複雑になります。

制度設計の原則

分析は細かく、利用者に示すルールはシンプルに。

この両立が、制度設計では重要です。

今回の改定をどう評価するか

ANAカードの決済額を評価することには、合理性があります。カード利用も、事業を支える貢献の一つだからです。

ただし、決済額を中心にSFCの特典を判定すると、搭乗による貢献が十分に反映されないケースは残ります。

報道によれば、ANAは搭乗実績との併用も検証したうえで、年間300万円の基準を維持しています。したがって、「搭乗実績を考慮しなかった」とは言えません。

問うべきなのは、検証した結果、なぜその判断になったのか。そして、混雑緩和と貢献評価の両面で、その判断は妥当なのかという点です。

出典:AIRLINE web・制度検証の説明

私なら、どう設計するか

改善案|筆者の提案

一定以上の年間搭乗実績、または一定以上のカード決済額。
いずれかを満たすことで、上位特典を維持できる案を検討します。

搭乗で貢献する人と、日常の決済で貢献する人に、それぞれ達成経路を設ける考え方です。

ただし、この案だけでラウンジ混雑が解決するとは限りません。高頻度利用者を広く対象にすれば、ラウンジへの来場も増える可能性があります。

そのため、条件を満たす会員数、時間帯別の利用人数、サービス提供費用を試算し、混雑時の運用と併せて検証します。

具体的な搭乗回数や決済額は、そのデータを見て決めるべきです。外部から「この数字が正解」と断定することはできません。

使わない人に、同じ高待遇が必要なのか

継続的な利用がない人に、利用の多い人と同じ高待遇を、無条件で提供し続ける必要はないと考えます。

ただし、「使わない人」の定義は慎重にする必要があります。搭乗が少なくても、カード決済で貢献している場合があるからです。

また、待遇に差を設けることと、顧客として大切にしないことは別です。基本のサービス品質を守りながら、貢献に応じて特典を変える。

それが、継続して利用してくれる顧客に報いる制度の考え方だと思います。

利用頻度の多さは、正義なのか

利用回数が多ければ、無条件に最も優遇すべきとは限りません。

回数だけでなく、利用額や継続性、サービス提供にかかる費用も見る必要があります。

それでも、継続して事業を支えてくれる人の貢献は、適切に評価するべきです。

全員に同じ待遇を与えることだけが、公平なのではありません。何を貢献として評価し、どの特典で報いるのか。そのルールが明確であることが、公平性につながります。

総括|問題の根幹から、制度を組み直す

今回の制度改定から考えたいのは、三つのことです。

  • 利用者の背景と、現在の貢献を分けて理解すること。
  • サービスの容量を超える前に、需要と提供条件を見直すこと。
  • 企業の持続性と、利用者への還元を両立させること。

コップに水を注ぎ続ければ、いずれ溢れます。溢れてから注ぐ量を減らすだけでは、なぜそこまで増えたのか、誰にどれだけ配分するべきかという問題は残ります。

制度改定も同じです。

プロジェクトマネジメントで行うこと

事象を整理し、原因を仮説として置く。
データで確かめ、対策の効果を検証する。

私たちがプロジェクトマネジメントで行っているのは、その繰り返しです。

SFCの制度改定も、利用者の不満と企業の事情、その両方を捉えたうえで、何を守り、何を変えるべきかを考える必要があると思います。

※制度に関する記載は2026年10月2日時点。原因分析と改善案は筆者の見解です。サービスの詳細・最新情報は、ANA公式サイトをご確認ください。

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