努力せず 盗み我がモノ 金儲け
努力すること自体が素晴らしい、という話ではありません。人が時間をかけてたどり着いた成果を、いとも簡単に自分のものにする人がいます。使うだけならまだしも、自分が考案したかのように振る舞い、利益まで得る。残念ながら、そういう人はどこにでもいます。
私が特に目にしてきたのは、サービスやプロダクトを開発する現場です。
ゲームのプロダクトマネージャーを務めながら、そのタイトルのテーマ曲の作曲・編曲まで手がけていた頃のこと。あるインタビュー記事で、制作に関わっていない人が私の仕事であることに触れず、まるで自分が制作したかのように語っているのを見て、驚きました。誰が作ったかを伝えるより、自分を売り込む機会だと捉えたのでしょうか。
農業の世界で思い浮かぶのは、イチゴの「レッドパール」です。愛媛県宇和島市の民間育種家・西田朝美さんが育てた品種で、韓国で増殖され、日本へ違法に逆輸入されたことが国会でも問題になりました。一人の育種家が生み出した成果が、本人の手を離れたところで広がっていく。その重みを、単なる「品種の流通」として片づけたくありません。
私自身も海外の売り場で、韓国産や中国産として販売されるシャインマスカット、クイーンニーナ、マイハートを見てきました。シンガポール、マレーシア、インドネシア、香港、台湾でのことです。シャインマスカットとクイーンニーナは日本の農研機構、マイハートは志村葡萄研究所志村富男さんが育てた品種です。
日本の育種家が交配と選抜を重ね、長い時間をかけて作り上げた品種が、海外産として各地で売られている光景には、複雑な思いが残ります。育てた人への敬意は、そして、その価値が育成者へ還元される仕組みは、どこにあるのでしょうか。日本生まれの高品種、と書くだけでも全然風景が違うのですがね。
コンサルティングの現場でも、他者が考えた改善案だけでなく、業務プロセスの設計やフロー、マイルストーンまで、クライアントに「自分が考えました」と説明する人がいます。頭のいいヒトにはそれがバレるんですが、現場は形があればなんでもいい、と当然言うので泣き寝入りのケースです。
だからこそ、コンサルタントは成果の帰属が曖昧になりやすい場面を意識しておく必要があり、過度な期待も、ヒトの信用もしないこと。人の善意だけに頼らないことも、自分と仲間の仕事を守る知恵です。
優秀であるだけでは、長く仕事を続けられません。成果を横取りする人がいる現実の中で、作ったものの価値を正しく伝え、守りながら前へ進む力も必要だと思います。
ちなみに、奪う側は得をし続けるのでしょうか。そんなことはありません。
人の成果を自分のものにして得た評価は、自分の実力として積み上がりません。次も同じ成果を求められたとき、自力で応えられなければ、また誰かの仕事を奪うしかなくなる。その繰り返しは、周囲の信頼も、自分の可能性も削られ、やがて崩れていく。
奪われた側が、怒りや悔しさをいつまでも抱え続ける必要はなく、時間の無駄、というのはそういうことです。勝手にツケを払う末路が必ずくるからです。
守るべきものを守り、自分の次の仕事に全力を注ぐ。盗賊に遭遇しても自分の仕事が良い方向へ行くことだけを懸命に見据えていきましょう。


Share:
ジャングリアの赤字から考える、集客とコンテンツ育成の違い
ANAのSFC制度改定を考察|プロマネ視点で見る課題と制度設計