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トイザらスの事業譲渡から考える、実店舗の価値と買い物体験

コンサルプロマネ経営考察
トイザらスの事業譲渡から考える、実店舗の価値と買い物体験

事例から考える、店舗体験と経営

「おもちゃといえば」のトイザらスが、ドン・キホーテを運営するPPIHグループへ、日本事業を譲渡する契約を締結しました。

日本トイザらスは2026年10月1日に民事再生手続き開始を申し立て、事業譲渡は、裁判所の許可などを前提に10月30日の実行を予定しています。

残念なニュースですが、店舗や事業を残すためには、必要な選択だったのかもしれません。

では、トイザらスは何がダメだったのか。

会社側は、少子化を踏まえた事業転換の遅れや、EC企業などとの激しい価格競争を、売上低迷の背景として挙げています。

ただ、私が考えたいのは、その先です。

価格競争が厳しかったとして、トイザらスには、それ以外の勝ち方がなかったのか。

今回は、買い物体験という視点から考察してみます。

オンラインを強化する前に、磨くべき強みがあった

私は以前から、トイザらスがオンラインを強化する方針を見て、「なぜ、そちらに舵を切るのかね?」と思っていました。

日本トイザらスは2000年にEC事業を開始し、2014年にはオンラインストアを全面刷新しています。店舗受け取りなど、実店舗とオンラインをつなぐ取り組みも進めていました。

オンラインの利便性を求める顧客がいることは、理解できます。

それでも、Amazonのような大手と、価格や配送の便利さを中心に競うのであれば、トイザらスを選ぶ理由は何になるのでしょうか。

私には、もっと優先して磨くべき強みがあったように思えます。

トイザらスに期待していた強み

名前への信用と、実店舗で買い物をする楽しさです。

オンライン強化そのものが経営不振の原因だった、と断定することはできません。ここからは、私自身の利用体験に基づく考察です。

「安く買える」だけが、選ばれる理由ではない

価格競争に敗れたから、トイザらスで買い物をする理由がなくなった。

そう整理するだけでは、大切なものを見落としてしまうと思います。

おじいちゃん、おばあちゃんが孫と一緒に出かけ、現物を見ながら選び、大きな箱を抱えて帰る。

子どもが目を輝かせて、「これが欲しい」とおねだりする。大人は、その顔を見て買ってあげたくなる。

トイザらスには、そんな時間がありました。

実物を見て、触れて、その場で気持ちが高まり、買い物が完了する。買った側も、買ってもらった側も、喜びを一緒に味わえる。

それは、商品を手に入れる以上の体験です。

Amazonで商品を注文するだけでは、同じ時間は生まれません。

私がトイザらスに期待していたのは、そこでした。

売り場だけでなく、家族の一日を設計する

私がもっと力を入れてほしかったのは、実店舗の買い物体験に、いかにワクワクと興奮を生み出すか、ということです。

家族で来店するのであれば、おもちゃを選ぶ時間だけでなく、その前後にも目を向けられます。

家族で出かけ、食事をし、おもちゃを選び、少し休憩して、団らんしながら帰る。

家族の一日を、買い物体験に

来店から帰宅までを、一続きの体験として設計する。

「おもちゃを買う場所」から、「家族で出かける理由になる場所」へ。

そんな方向に、もっと可能性があったのではないでしょうか。

食事をする場所が欲しかった

複合施設の中にある店舗なら、周囲の飲食店がその役割を担えます。

一方、私が利用してきた単独型の店舗では、「ここで家族の食事まで済ませられたらいいのに」と、よく思っていました。

店舗や敷地の条件が合えば、一部の区画を飲食店に貸し出し、家族で食事ができる空間をつくる。

自社でレストランを経営する必要はありません。外部の事業者と組む方法もあります。

もちろん、導入できるかどうかは、賃貸条件や採算を確かめる必要があります。それでも、家族の滞在時間を豊かにする選択肢として、検討してほしかったところです。

少しお茶をする場所も欲しかった

食事ほどではなくても、買い物の前後に、少し座ってお茶ができる場所がある。

それだけで、家族のお出かけは随分と楽になります。

子どもがおもちゃを選んでいる間に、大人が交代で休める。買ったものを眺めながら、少し話をしてから帰れる。

買い物の途中にある「休む」「話す」という時間も、店舗体験の一部です。

売り場の外側にある時間まで考えることが、来店のしやすさにつながるのではないでしょうか。

「また来る理由」をつくる

もう一つ、私が物足りなく感じていたのは、次に来る理由です。

買ってもらって満足。それで終わってよいのは、利用者の側です。

お店は、「また来たい」と思ってもらうきっかけまで考える必要があります。せっかく時間を空けて来てくれたのですから、その接点を大事にしなくてはいけません。

クーポンのように、価格で再来店を促す方法もあります。

ただ、私なら、その先を考えます。

再来店を生む問い

「また安く買いたい」以上に、「また、あの体験をしたい」と思ってもらえるか。

たとえば、こんな企画です。

また来たくなる、体験のアイデア

  • 家族で挑戦する、おもちゃの体験会
  • 対象商品の詰め放題や、1点購入でもう1点もらえる企画
  • 来店のたびに楽しめるスタンプ企画やイベントガチャ
  • おじいちゃん、おばあちゃんが活躍できる、孫との遊びのイベント
  • 飲食店と連動した、期間限定のファミリー企画
  • キャラクターの登場や、メーカーとの共同イベント

企画そのものなら、いくらでも考えられます。

ただし、アイデアを出した数だけ、事業が回るわけではありません。実際に来店理由になったのか、再来店や購入につながったのかを確かめ、続けられるものを磨いていく必要があります。

オンラインにも、店舗を生かす役割がある

オンラインに需要がなかった、とは言いません。

店舗へ行けない人もいますし、大きな商品を配送してほしい人もいます。

ただ、私が求めていたトイザらスの価値は、オンラインで商品を買えること以上に、店舗で過ごす時間にありました。

だからこそ、オンラインも、その強みを生かすために使ってほしかったのです。

イベントを知る。参加を予約する。店頭在庫を確認する。店舗で見つけた商品の関連情報を、帰宅後に調べる。

店舗へ行く前と、帰った後をつなぐ使い方です。

サービスを考えるときに大切なのは、流行の販売方法に合わせることよりも、顧客が何を求め、どこに不便や期待を感じているのかを捉えることだと思います。

私が好きだった、価格末尾の「99」

私は、あの価格末尾が「99」なのが好きでした。

安く見えるけれど、私にとって、その安さ自体はそこまで重要ではありませんでした。

「トイザらスといえば、あれだった」という記憶なんです。

ほかの玩具店とは違う雰囲気があった。おねだりをするには絶好の場所だった。行くだけでワクワクした。

子どもたちには、そんな思いがあったはずです。少なくとも、私にとってはそういう場所でした。

値段の記憶よりも、買い物をしたときの気持ちが残っている。

そこに、実店舗の強みがあったのだと思います。

経営センスは、顧客を見続けられるか

経営センスとは、戦略や戦術のアイデアをつくることだけでも、それを実行することだけでもないと思います。

顧客が何を考え、誰と来店し、どんな気持ちで買い物をしているのか。

商品が欲しいのか。子どもの喜ぶ顔が見たいのか。家族で楽しい一日を過ごしたいのか。

そこから生まれる期待や不便を捉え、サービスを進化させ続けること。

経営で大切にしたいこと

顧客が商品を買う理由だけでなく、その店を選ぶ理由を考え続ける。

それができるか。そして、実際の売り場やサービスに反映できるか。

私は、そこに経営センスが表れるのだと思います。

※本記事は2026年10月2日時点の公表情報と、筆者自身の利用体験に基づく考察です。店舗体験への提案は、経営不振の原因を断定するものではありません。

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